「出た?出たぞ。すごい」吉村先生の興奮した声が現場に響き渡りました。
奇跡的発見の瞬間です。私は上ずった声で「出たぁ」と叫ぶのがやっとでした。
そしてちょっぴり景色がぼやけて・・・
2007年10月22日 エジプト・ダハシュール北遺跡。 前日まで見込みのありそうな墓穴をいくつも、地下数メートルまで掘りました。でもすでに盗掘されていたり未完成のまま放っておかれたものばかりでした。
吉村作治先生率いる早大・サイバー大合同古代エジプト調査隊の面々も、さすがに落胆の色が出始めていました。
もっとも古代エジプトの墓は99.99%以上盗掘されています。特に埋めて数ヶ月以内に副葬品を狙った親類にまず墓を暴かれてしまうことが多かったようです。その後も数千年間、常に盗掘の危険にさらされ続けてきたわけですから、未盗掘の墓を発見するということは、宝くじで1億円を当てるよりもずーと確率の低いこと、まさに奇跡なのです。
それを「もしかしたら発見される前から発見される瞬間までをテレビカメラで収録できるかもしれない。それができたら世界初の快挙だ」といういささか無謀な大きすぎる期待でテレビ取材クルーを連れて来たのが私でした。
吉村先生は明日、日本に戻らなければなりません。私も「やっぱりだめか」と肩を落とし、諦めかけていたのが10月22日午前10時の頃でした。
エジプト人作業員が4カ所目の発掘場所を掘り始めていました。ものの20分もたったでしょうか。馬場発掘主任が「あ!」叫んで吉村先生を呼びました。
「どうした?」と先生がそばに。地上から縦に数十センチのところで横穴の上部分のようなものが見えます。
私もカメラマンを呼んですぐ撮影を開始させます。
作業員が小さなシャベルで掘り続けます。
その間、30秒足らず。一瞬、黒い何かが見えました。
黒地に黄色。古代エジプトの文字、ヒエログリフ?
「出た?出たぞ。すごい」吉村先生の興奮した声が現場に響き渡りました。
奇跡的発見の瞬間です。
最初に見えたのは木棺の蓋の足の部分でした。
上にそりあがっていたのではじめに見つかったのです。
横穴に見えたのは縦穴の長さが足りず、木棺の足の部分が入りきれなかったので少し横に拡げたためだったようです。
次第に顔が見えてきました。まず赤い鼻が現れました。 |